日本には茶道、書道、武道、華道、芸道、医道のように、何らかの具体的な技芸を身につけるプロセスを通して技芸の巧拙を超えた精神性を拓こうとする伝統があるのは、よく知られています。
鍼治療の世界でも『鍼道秘訣集』(御園夢分斉)や『鍼道発秘』(葦原英俊)などの古典が残されているように、古くから「鍼道」が標榜されて来ました。
当会があえて「鍼道」と言わないで「いやしの道」と称するのは、鍼灸治療を基礎に置きながらも、それにとどまらず、鍼や灸を使うかどうかも問題でなくなるような深まりと広がりのある立場から、病む人が安らかさを得ることを考えているからです。
また、そのような場にあってこそ、鍼灸治療もより活かされることになるでしょう。
「いやし」は生命の根源とつながっています。
今ここに生きている人間が、自分の生きている場ははたして安らかで心地良いものであるかを振り返れば、現時点だけを問題にするだけでは不充分です。
地球上に初めてヒトが誕生した時、さらには原初の生命が誕生した時にまで立ち帰って考えなければならないようなことです。
私たちは単に体としてあるのではなく、心をもった生命体として存在しています。
従って「いやし」とは、このような生命体が存在しやすい根源の場へ回帰し、体と心が苦しみから解放されることと言えるでしょう。
「いやしの道」では、まず辛く苦しむ人を楽にしてあげたいという「いやしの心(施無畏の心)」を持っていることが重要です。
~ いやしの道創成者・横田観風の揮毫 ~
そして「いやし」が最も良く実現できるのは「いやし手」自身がいやされている時です。
しかし「いやし手」も悩み多く、弱さをも持つ人間です。
病める人をいやすことを通して本来の自己に目覚め、いやすことの喜び、生きがいを与えてくれることへの感謝を知って、安心の境地に達する、すなわち自他共に安心する世界を実現するのが「いやしの道」です。
いやしの道協会
第三代会長
朽名宗観
いやしの道協会は、横田観風が創成した「鍼灸によるいやしの道」を学び、自己を修め、多くの病める人たちのために生き、世の一隅を照らすことを自己の喜びとする者の集まりです。
学術道三位一体の人材をより多く育成することを願い、広く門戸を開放し、様々な研修会を催しています。
いやしの道協会の治療法である「万病一風的治療」は、横田観風が自身の闘病体験、数十年の臨床経験、禅の修行により悟得した世界を基に、吉益東洞の「万病一毒」、葦原英俊の「万病一邪」から多大な示唆を得て、創成したものです。
その眼目は「寒熱虚実の立体的分布を見極め、それを調整し、病の原因となる邪気を取り去り、毒の排出をうながすこと」です。
初伝から始まり、中伝、奥伝と学びを深めていきます。
「学」においては四部録(『万病一元論の提唱』『傷寒論真髄』『鍼道発秘講義』『経絡流注講義』)を学び、「術」においては「基本の型」を通じて、必要な技を修得していきます。
さらには「道」の修行も重んじ、「学術道三位一体」を目指します。