研修要綱


横田観風が提唱する「万病一風的治療」の目標は、治療家がまず身・息・心の調和を図ることによって、患者の生命状態、寒熱虚実、邪毒の在り様などを的確に感じとり、それにぴたりと応じるように手の内で、自ずと鍼を運用するところにあります。そのような治療を実現するために学・術・道を三位一体としながら体系づけられているのが、当会の研修方式です。

診断法は吉益東洞および『傷寒論』についての研究に基づき、特に腹診を重視し、脈診、舌診、問診からの情報を統合して病態把握を行います。鍼の運用法は、葦原英俊の原典を解説した『鍼道発秘講義』を通して会得します。こうした診断と治療を生きた人の身体でつなぐことを、独自のメソッドである「基本の型」により各課程を経ながら実技を通して稽古します。

 

それらの全体像は、富士山に見立てた下記の図で表されます。

以下、富士山の麓から順に説明してまいります。

1)観念的知識

『素問』『霊枢』『難経』をはじめ、現代中医学、西洋医学等、体系化、理論化された多くの知識を学び、理に埋没し山の裾野を広げます。

2)四部録

いやしの道・底本となる横田観風著の四部作。万病一風的治療法を理解し易くするために、四つの角度から解説。単なる学問のための書物ではなく、理の世界と理を離れた世界をつなぎ、道の世界へと導きます。

 

『万病一風論の提唱』谷口書店

『傷寒論真髄』績文堂

『鍼道発秘講義』日本の医学社

『経絡流注講義』医道の日本社

 

四部録のご購入は、貴重な資料を後世に伝える「日本の医学社」へ

3)入門講座

以前は初心者を対象に、対面形式で「初伝・入門講座」を開いておりましたが、後にオンライン化され、現在はその録画をご購入いただく形式となっております。分厚く難解な四部録の要点を全五回(各回二時間半)で解説しております。合わせて、実技の要点や、臨床例の解説もしております。非常に濃密でありながら、初学者に分かりやすい、入門者必修の講座です。

4)初伝

鍼灸治療の「基本の型」の修得を目指します。管鍼法のマスター、的確なツボの取り方、治療に適した身・息・心の基礎作り、生命のあり様の感得等を学びます。この課程を充分に修めれば、患者を治療して,治癒に導くことができるようになります。

5)中伝

「応用の型」の修得を目指します。無鍼管法、直感的な診断への理論的裏付けづけ等をマスターし、更なる治療効果の向上をはかって、いやし手としての完成に近づきます。さらに希望者は、指導者として後進を導くことに備えます。

6)奥伝(序)

鍼灸の臨床のみならず、指導者として後進を導くなどの経験を経ながら、己れを活かし、他を活かすという「いやしの道」に深まりに特定の立場に限ることなく、歩みを進めます。

7)奥伝(境涯)

いやし手の人間としての境涯の高まりを目指します。医者としての完成が地三昧であれば、人間としての完成が王三昧の境地で、これには「遠山無限碧層層」で限りがありません。

※ 基本の型について

いやしの道には、診察法及び鍼治療の「基本の型」があります。指導者の点検を受けながら型を稽古し、四部録の内容を身心で修得し。鍼という道具を自分の手の如くに使いこなせるようにしていきます。無心になって患者の生命状態に合わせて事を為せるようになり、鍼灸による「いやし手」としての完成を目指します。

四部録について


1)『万病一風論の提唱』

万病唯一風の体験悟得を、多方面から解説。いやしの道を実践し、行ずる者の指針となり、又、医学的のみならず、哲学的、宗教的、思想的バックボーンとなるもの。初学者はまずこの書から読み、常に座右に置いておくとよいでしょう。

2)『傷寒論真髄』

湯液の聖典『傷寒論』を万病一風の立場から解説。その特徴は、日本古方漢方の祖、吉益東洞が提唱した万病一毒の立場から、薬方を検討し、現在只今の病的状態をイラストを用いて図示したので、身体内部の毒のあり様と、外部に出現している症状との関係が一目で理解できること、又、各条文を検討整理し、病的状態の時間的、空間的変化の様相を図示し、簡単に理解できることです。

 

これにより、今まで湯液家のみが読むべき書であった『傷寒論』が、生命や病気のあるべき様を示す書に変換されたので、鍼灸を道具とするいやし手にも役立つことにりました。

3)『鍼道発秘講義』

江戸時代の葦原検校著『鍼道発秘』を万病一風の立場から解説。この本には、種々の病気に対する治療法が極めて簡潔に記してあります。その根底にある考え方は、万病一邪であす。初学者は、この書を患者に実地に試み、工夫参究してゆけば、必ず病苦がいやされてゆくことを体験できるでしょう。

4)『経絡流注講義』

古典である『霊枢』経脈篇を万病一風の立場から解説。この篇は、いわゆる臓腑経絡説の体系を示したもので、これらの内容を種々検討し、それ以前の経絡現象の体験悟得から見直し、真の経絡流注の姿を探求したものです。本書は、万病一毒と万病一邪とをつなぎ、治療の際にイメージを作る上で重要な役割を演じます。

この四冊は独立しておらず、それぞれ密接に関連しています。特に(2)(3)(4)は、それぞれ湯液、鍼、経絡と、全く異なる内容の本の如く感じられますが、奥底にあるものは一つです。これらは、万病一風的治療法を解説するために、便宜上、方便として異なる角度から説いたものです。

 

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